人の輪が広がる美大生シェアハウス「ゲストハウス檸檬」。また訪れたくなる秘密とは
フリーで服飾の活動をしながら、服飾を中心としたシェアアトリエirohasoを企画中。“人を繋ぐ”をモットーに、服作り、コーディネート、アレンジ、写真撮影、ライターなどしている。依頼者の思いを受け取り、他の生産者と顔を合わせ、製作のプロセスを大切にした活動を目指している。
「もっと広い場所で作業できたらいいな」
「いつでも自由に使えるアトリエが欲しい」
もの作りが好きな人、それを仕事にしているらば、1度はふとそんなことを思ったことがあるはず。
武蔵野美術大学にほど近い静かな住宅街の中に、そんな思いを叶えてくれる場所がある。それがゲストハウス檸檬だ。8人の美大生と猫が1匹、そして同大学の職員をされていた湯川さんが暮らしている。
ギャラリースペース、アトリエスペース・・・そこはまさに、私も作りたいと思っているような環境だ。
私は服飾の仕事をしていて、地域や外に開かれたシェアアトリエを作りたいと思い活動している。
どんな風にしてオープンを実現させたのか、運営をおこなっている湯川さんにお話を聞かせていただくことになった。
「どんなお話が聞けるだろう?」とドキドキしながら向かったが、最寄り駅から歩いて15分。
正直、気軽に行くには「遠いな…」と感じた。お店などはほとんどなく、民家や畑が続いていて、直線の道が余計に距離を遠く感じさせた。
ところが、インタビューを終え、帰る頃には不思議と「また来たいな」と思える距離になっていたのである。どうして私はそんな風に思えたのだろう?ゲストハウス檸檬の、何がそうさせたのだろう。
湯川さんは武蔵野美術大学の出身で、同大学で入試のサポートのお仕事をなさっていた。美大生が住む場所、欲しい環境、卒業後の進路に関する悩み等、美術の世界で生きようとする人たちのリアルな声をたくさん聞いてきた。
ご自身もその頃、業者が運営するシェアハウスに住んでおり、震災のときには皆で助け合えたので全く不安がなかったこと等、シェアハウスのよさも身にしみて感じていた。
シェアハウスの機能と、美大生のニーズが上手くマッチすることに気づき、大学の仕事を辞めた後は、シェアハウスを通して美大生をサポートしていこうと決めたのだ。
湯川さんは、私の質問に何でも快く答えてくれた。
どうやって物件を見つけたのか?
集客はどうしたのか?
資金はどうやって調達したのか?などなど…
長期的に運営を考え、継続させて行く為には、ビジネス的な考えも必要だ。目的、住む人のターゲット像、規模、立地、資金はどのくらい必要か。それがはっきりしていくと、今度は事業計画、収支計画を立てていく。
当然全て一人ではできない。そのため湯川さんは周りの人々に相談したり、色々な機関を利用し計画を進めていった。
創業を支援してくれる機関もいろいろあり、事業計画書があれば融資も受けられるようになるし、その事業計画書のも書き方を教えてくれるところもある。税金等、苦手な分野は周りの人が助けてくれたという。
特に物件探しはなかなか難しい。というのも、そもそもシェアできる物件が少ないし、市場に出にくいところが多いからだ。間取り的にはシェアハウスに理想的な物件でも、転貸が不可なケースがほとんどだ。だから、シェアハウスにできる物件というのは、不動産屋さんで探すというより、人の紹介で見つかる場合も多いという。
シェアハウスをやろうと思ったら、たくさんの人にそのことを話して、「物件を探している」ということを頭の隅に入れてもらうのがかなり重要だ。なかなか物件が見つからないため、当初は倉庫みたいなところを探していたが、最終的には人の紹介で理想的な物件が見つかった。色んな条件が重なり、新築で建て直すことになったが、その際も設計はムサビ出身の建築士さんたちが請け負ってくれることになり、部屋のレイアウトや機能、設備、使う素材から何まで皆で綿密な話し合いを繰り返し、周りの人達と作り上げていった。
そして住む人のメインは、「ムサビの学生」とはっきりしていた。とにかく、出会う人にシェアハウスをやることを伝えたという。ムサビの卒業生はもちろん、仕事柄、学校のイベントを一緒に作ってきた現役生等など…
ターゲットに対し、上手く情報を広められると、入居者が決まる確率も高くなる。
湯川さんは「とにかくいろんな人と関わり、構想について話すべきるべき」とおっしゃっていた。旅が好きな湯川さんは、旅先で出会った人達から、シェアハウス運営のヒントをもらうことがあったり、お金に関することをサポートしてくれる人とも出会えたという。
こうしてインタビューしている間にも中、住人以外の人の出入りが何度もあった。
駅からちょっと遠い場所だからこそ「この場所が好き」と思った人だけが来る。
ゲストハウス檸檬は、初めてでもなんだかなじみの家に来たような居心地の良さがあった。それはきっと、運営者の湯川さんの飾らない気さくな人柄がそうさせている。
”普段の姿を見てほしいと思い、あえてきっちり掃除しませんでした”という湯川さん。
「シェアハウスを始めようという人には、いいところばかりを見せてもいけない」という湯川さんの真意があったそうなのだが、私はそこから、湯川さんの人柄を垣間見た。
初めての訪問者が来るとなれば、よく見せようときっちり片付けようとしがちではないだろうか。もちろん、それは訪問者への気遣いとして有難いものだが、あえていつものままの様子を見て感じてもらう。これはとても勇気のいることだ。些細なことのように思えるが、これによって生活の中にそのまま入り込んだような温かさがを感じられる。
そして湯川さんも、住んでいる人も、それぞれの自分のペースを大切にする。せのびしすぎると、変に緊張感が出てきてしまうし、最初はよくても続かなくなる。そういうものがないから、この空間は初めて来ても落ち着ける居心地の良い場所になっているのだと思う。
湯川さんの飾らないオープンな人柄が、住人にも伝わり、来ている人にも伝わっているのではないだろうか。
インタビューを終える頃、私はすっかりゲストハウス檸檬を身近に感じていた。
「また来たいな」そう、思った。
1.家中どこの壁にも釘がさせる=作品を飾れる→家ごとギャラリーになる
2.トイレの入り口が2つ!家の中からも外(ギャラリースペース)からも入れる。さらに、一つの鍵で2つのドアが閉まる仕組みになっている。うっかり反対側が開いちゃった!という心配が無い。
3.ネコにも住みやすい!ネコ用の扉がある。
家に溶け込む看板ネコ、きゃん
人が話をしていると、皆の輪に入ってくる、人が大好きなきゃん。家の壁の色が保護色になってしまう。ふすまを自分で開けられるのは湯川さんの想定外だった。
4.天井が高く、どの部屋にも窓が2つあるので4畳半の個室が狭く感じない
5.ドアの色もカラフルに。2階は360度似たような景色なので、酔っぱらった時など自分の部屋を間違えないように、という配慮
ゲストハウス檸檬は、地域の行事を手伝ったり、家の前でフリーマーケットをしたり、ギャラリーで展示会をしたりしている。地域に上手くとけこみながら、人が人を呼び、今後さらに活動の輪が広がっていくことだろう。
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