暮らしの現場

”住み開き”で田舎に居ながら全国と交流する家「有田山荘」

2013/07/15

内田 勉
内田 勉

空想実現家

メディアエンジン有限会社代表。テレビディレクター/プロデューサーとして、報道・情報番組を中心に2500本以上の制作に関わる。現在はテレビ朝日「グッド!モーニング」を担当。約1年前からシェアハウスにハマり、日本初の鉄道模型シェアハウス「ナインステージ」を開設。楽しい「思いつき」を現実にすべく、日々猛進中。https://www.facebook.com/tsutomu.uchida

シェアハウスに住んだり、運営したりすると、沢山の人と交流の輪を広げる事ができます。ただ、24時間他人と生活する事に少しハードルを感じる人もいると思います。そんな人は「住み開き」という選択肢を考えてみてはいかがでしょうか?

「住み開き」とは、読んで字のごとく、住みかを外部に開放する生活スタイル。家の一部を週末だけギャラリーにしたり、カフェにしたり、イベントを開催したり…。本来プライベートな空間である住居を、少しだけパブリックな空間に変える事で、様々な交流が生まれていきます。

今回紹介する西塔大海(もとみ)さん、ともみさんご夫妻は、福岡県上毛町(こうげまち)で「有田山荘」という古別荘を借り、「お客さんを自宅に泊める」という形で住み開きを始めました。今回、私はひょんな事から小学生の娘と2泊させていただきました。


東日本大震災を機にIターン


福岡から車で約2時間、上毛町は人口8,000人の小さな町です。今年5月、西塔さん夫妻は友人に誘われ、上毛町の山間にある「有田山荘」という古い別荘に東京からIターンでやってきました。
※Iターン:出身地とは別の地方に移住すること。主に都会の出身者が田舎に定住すること。

東日本大震災の直後、ボランティアとして入った気仙沼市で被災者の雇用を作る「(社)気仙沼復興協会」を立ち上げた大海さん。その過程で沢山の地域活性の研究者と出会い、生産者と消費者の関連性が希薄な東京での暮らしに危険を感じた そうです。

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「3.11の際、お店の棚からどんどん商品が消えていく事に衝撃を受けました。土や木がなかったらいざという時、怖いなと。田舎なら流通がストップしたり、何かあっても、土があって百姓が出来れば生きられる(大海さん)」

そして、よりリスクの少ない、生活をしやすい場所を探そうとした、とも。その時出会った研究者の一人が、妻のともみさんでした。

「普通の田舎。ここにしかない特産品や観光地があるわけでもないですし(ともみさん)」という上毛町。大海さんは現在、町役場で「地域起こし協力隊」の仕事をしながら、日々地域の活性化に取り組んでいます。

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移住するにあたり役場の方の紹介で出会うことができたのが、40年ほど前に建てられ、あまり使われない状態になっていた「有田山荘」でした。

この地域の家には全て家号(やごう、家の呼び名)がついています。有田山荘の家号は「空(そら)」。谷間の集落で一番上に建っているからだそうです。その名の通り、晴れた日には遠く瀬戸内海の周防灘が見えるそうです。

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有田山荘の暮らし


有田山荘の暮らしとは、どんな生活でしょうか? 私が2泊した中で、一番象徴的だと感じたのが、釣りに行った時の出来事です。

「娘を自然の中で遊ばせたい」と私が希望し、川でハヤ釣りをする事に決定。その際、遊びに来た西塔夫妻の友人2名も合流。いつの間にかメンバーが増えています。

釣り道具を持っていないので、地域の顔役の人の所へ行き、竹をもらい竿を作ります。ついでに糸や針のつけ方を教わり、網や浮きなど他の道具一式も貸してもらいます。世間話をしながら、2時間ぐらいかけて準備が終了。田舎ならではのテンポ感です。

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ひとしきり釣りと水遊びを終え、先ほどの方の所に戻り釣果を報告。ついでに羽釜を借りて、有田山荘に戻り薪でご飯を炊いてみます。

野菜は、近所の農家の方が知らないうちに玄関先に置いていってくれます。さらに鹿肉をいただく事も。この辺りでは鹿は害獣で駆除の対象なのです。お陰で食費は思ったほどはかからない、という事です。


地域と信頼


釣りの道具は、東京だったら通常は買うかレンタルするところでしょう。でも上毛町では無いものは作る、作れなければ借りる事ができます。

野菜や鹿肉も余ったものだからと「誰かが」届けてくれます。金銭のやりとりは無く、物々交換ですらないのです。

なぜそんな生活が可能なのかと言うと、一言でいえば、2人が地域から信頼されているからです。「ここでは現金ではなく「信頼」という通貨がやりとりされています。信頼がなければ生きていけないし、何もできません」と大海さんは言います。

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では、信頼はどこから生まれてくるのでしょうか?

例えば、地域の人々と総出で道路の清掃をしたり、水道トラブルをどう解決するかみんなで会議したり。そういった日常のコミュニケーションの場に西塔夫妻は参加しています。でも、もっと深いレベルで信頼は生まれてくるのだと感じる言葉を私は耳にしました。

「きのう軒先に置いてあったトマト。この味は、きっとxxさんの家でとれたものに違いない(大海さん)」

誰がどんな野菜を作っているのか、さらに言えば同じ野菜でも品種によって味が違いますし、畑や育て方でも味が変わってきます。そこまで相手の事を知り、理解しようとしている人だけが発する事のできる言葉ではないでしょうか。

相手を尊重して理解する、自分でできる何かを誰かにしてあげる。丁寧なやりとりの中で信頼は生まれ育まれていくのだと感じました。


住み開きがもたらすもの


たった2日間、住み開きをしている家にお邪魔させていただいただけで、私は地域とは何か、地方とは何か、生活とは何かという事について、沢山学ぶ事ができました。

住み開きをする理由について大海さんは「楽しいから」と答えます。

「地方に移住したことで、東京的な刺激ある人間関係は手放したつもりでした。けれど今は、自分が出向かなくても各地からこちらへ人が来てくれる。東京に住んでいたとき以上に刺激をもらっています。僕らが話を聞きたくなるような面白い人は、決まってとても忙しくて、東京で話すのはは2時間が限度でした。でもここなら一泊二日かけてじっくりお話ができます。」

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外からお客さんを招き入れる事で自分たちも刺激を受けるし、都会からきたお客さんも普通では得られない体験をする事ができる。そういう関係が「住み開き」によって始まろうとしています。

24時間生活を共にするシェアハウスというライフスタイルの手前にある、誰でもちょっと勇気を出せば実践できる、極端に言えば6畳一間のアパートでもできる「住み開き」という手法。自宅の一室から何かが生まれる可能性を、西塔夫妻は教えてくれます。


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