暮らしを創る人

【後編】秘訣は“半仕上げ”!? 会員約100名が集うワークプレイスco-baで場創りの源泉を探る

2013/08/22

水谷 ともゑ

前編はこちら


暮らしを創る人_co-ba_01
icon-sample

ゲスト:株式会社ツクルバ CCO 中村真広さん

東工大大学院建築学専攻を卒業後、「株式会社コスモスイニシア」で不動産営業を担当。転職して、ミュージアムデザイン事務所で空間デザインを手掛けた後、独立。2011年8月に「株式会社ツクルバ」を設立。12月にシェアードワークプレイス「co-ba(コーバ)」http://co-ba.jp/ をオープン。オープンから1年8ヵ月を迎え、現在約100名の会員が集う場所になっている。

icon-sample

聞き手:colish代表 小原憲太郎

大学を卒業してすぐにSNSの事業を起業した後、IT系企業に就職してモバイルサービスの企画・新規事業企画を担当。独立後、Colishの運営とシェアハウスのプロデュース事業を開始。

03 n対nの交流を生む秘密


小原
「co-ba」というコミュ二ティの原風景は、どこにあるのでしょうか。

中村
「co-ba」に建築系の人が来ると、「なんかめっちゃ製図室っぽいね」って言われるんです。僕の大学では、2~3年生全員が1人ひとつ机が割り当てられて、ワンフロアで作業をしました。2年生が徹夜していると、「この設計はどういう意図でやってるの?」って3年生が話しかけてきたり。そこですごい議論になったりするのですが、そのディスカッションが原風景かもしれない。

creater03_05

小原
コミュニケーションが起こりやすくなるポイントって、どういうところにあるんですかね。最初に場を作るときって、普通は1対n(主催者×参加者)で交流が広がりますよね。それをn対n(参加者×参加者)にする工夫というか。今の「co-ba」はn対nのフェーズだと思うんですよ。そのフェーズにどうやって持っていったのでしょうか。

中村
ひとつは、コミュ二ティ参加者の断片を、シェアスペースに常に置いておく仕組みを作ることだと思います。建築学科の製図室でいえば、模型が机の上に残っていたりして、それぞれの学生の頭の中が共有スペースに常にシェアされている。「co-ba」の場合、本棚「シェアライブラリー」がまさにそうですね。棚のひと枠ごとに各会員さんの“萌える本”が置いてあるので、当人がいなくても「この人とはいい酒が飲めそうだな~」って思う人がいるかもしれない。

小原
それはありますね。

中村
もうとつは、「祭(=非日常)」を起こすことだと思いますね。製図室ならば、4年生の卒業設計を毎年2~3年生がプロジェクト化して手伝うのですが、そこで新たなコミュ二ティが生まれます。「co-ba」なら、会員同士チームを組んでWindowsのアプリを開発するなど、コラボプロジェクトが祝祭的な要素になる。

小原
2005年ごろ、起業をして「enzin.net」というSNSのサービスを作ったのですが、そのときは個々人が気になっている「キーワード」を他の人が気づけるようにすることを強く意識しましたね。オンラインでもリアルな場でも、n対nのつながりが自然と生まれるようにするためには、互いに関心を持つ「キーワード」を表に出すことって大事ですよね。

creater03_01

中村
確かにそうですね。「co-ba」の会員交流会では「3分プレゼン」というのをしています。「今こういうプロジェクトのスタートアップで、デザインできる人を探してます!」みたいなちょっとした告知ができる場を常に設けています。そうすると、「プレゼンするつもりなかったんだけど、思いついちゃったんで発表させてください」みたいないな人が出てきて、そこから新しくプロジェクトが生まれたりして。

小原
なるほど。コラボレーションは結果であって、目的ではないということですよね。お互いの持っているネタを共有した結果、新しい刺激として楽しむだけでも良いし、結果としてコラボレーションが起きるのも良い。そういうコミュニティとしての懐の深さ、いい意味での「緩さ」っていいですね。

中村
ほんとですね。僕、最近コミュ二ティって植物みたいだなって思ってるんですよね。「笑っていいとも!」を長く続けられる理由を、タモさんは「無理しないから」って言っている。「無理すると続かねえじゃねえか」って。植物も同じで、陽のあたる方向には伸びていくけれど、それ以外の葉を落としていったりして、無理をしないな、と。

小原
コミュ二ティを植物に例えるって、おもしろいですね!

中村
「co-ba」というコミュ二ティを植物に例えると、僕らがしていることは3つ。①太陽を示すことと、②種を植えること、③伸びてくる芽に対して添え木をすること。この3つだと思っていて。

creater03_02

中村
①の太陽は、「コミュ二ティはこういう場所にします」「こういう方向に伸びていきましょうね」って、設定すると。「シェアードワークプレイス」という形で、コミュ二ティに対するキャッチフレーズを作ったり。②の種は、どんな種(人)を集めるかということ。そして、育ってきたら僕らがやることは③の添え木をすること。

小原
いい意味でかなり放置してるんですね。

中村
こんなにIT関係のコミュ二ティが伸びるとは思っていなかったし、想定外のことばかりです。重要なのは、添え木はするけれど「盆栽」はしないということ。「そういう方向に伸びたらダメ」と、バチッと切ったりはしないんです。


04 あえて「半仕上げ」が大事! ドヤ顔で完成品を出さない


小原
太陽っていうのは、今の「co-ba」にとってはどういうものですか?

中村
今の段階では、①Open Process、②Open End、③Good NOIZE、④“CO” Gradation、⑤SOCIAL CAPITALを「5原則」に掲げています。大切にしたい5つくらいのポイントをブラッシュアップしていくとそれが太陽になっていくのかな、と。

小原
②のオープンエンドっておもしろいですね。

creater03_06

中村
空間というハード面も制度などのソフト面も、あえて「半仕上げ」にしたいんですよね。「co-baライブラリー」の話を聞いてやって来た人の中には、「なんでこんなに本が埋まってないんだ」って言う人がいるんですけど、埋まってなくていいんです。
ブックディレクターに予算100万円で超かっこいい「ドヤ顔の本棚」を作ってもらうのもいいけれど、僕らが目指したいのそうじゃない。みんなで作り上げていく本棚なんです。

小原
むしろ「埋まってないけど大丈夫? 持ってこようか?」って、母性本能をくすぐられるようなデザインですよね(笑)。場をうまく作る人って、変わることへの許容力と、ほかを受け入れる包容力があると思う。アーティストタイプの人や、完璧主義者と逆ですね。でも、そういう人に限って片付けるのが苦手だったりする。中村さん、だらしないタイプですか?

中村
ある部分はテキトーですね(笑)。建築家って、1から100まで全てにおいて細かい人が多い。「少し隙間できちゃったけど、埋めときゃいっか」みたいなことは許されないし。もちろんそういう厳しさも重要なんですけど、僕の中では、どこまで詰めてどこまでユルくするか、というさじ加減にいつも葛藤しています。みんなを巻き込んで作るときは、ユルいくらいの方がいいものができる。「co-ba」の塗装をするときも、入居者の方とみんなで作業をしました。よく見ると塗りきれてないところがあっても、この場所にとってはむしろそれが味になるんですよね。

小原
100%完璧な状態でスタートしないって、大事ですよね。不完全な状態からみんなで作りあげていく過程が、むしろコミュ二ティの強度になっていく。

中村
許容力のある空間を作るときにユルさと同じくらい大切なのが、ブレない部分だと思います。中国・北京に、「建外SOHO」という六本木ヒルズ的な建物があるのですが、これがおもしろい。
住居として使っている人もいれば、オフィスにしている人もいれば、ジムとして改装されている部屋があるのですが、夜になると部屋の中の様子がディスプレイみたいに見えるんです。部屋と部屋の仕切りがグリッドのように同じサイズなので、その分部屋の中の美しさが際立つ。生活が、まるでサムネイル写真みたい。グリッドのブレない強さが、中の振る舞いを「作品」にしているんですよね。

creater03_07

小原
「co-baライブラリー」も、本棚のグリッドの部分はしっかりと作られている。ハードでいうと、グリッドが太陽的なものになるのかもしれませんね。

≪完≫

「株式会社ツクルバ」のNEWS
4月に新しく神保町にコワーキングスペース「EDITORY(エディトリー)」を開設。
この場所を起点に神保町という街自体を見直し、会員同士が専門領域を超えて「EDITORY = EDIT TERRITORY(領域の編集)」をしていけるような場を目指す。
6月には、原宿にクリエーティブワーカーのための新築シェアオフィス「FLAG(フラッグ)」http://flag-tokyo.jpをオープン。

中村さんに質問!

これまでに影響を受けたコミュニティ
etteda!(イッテダ): http://etteda-japan.com/
大学院時代に友人たちとともに開催した、日韓の若手クリエイターの展示会とそのコミュニティ。展示に参加する各領域のクリエイターの卵たちは、自分たちでひとつの展示会をつくっていくDIYのプロセス、そして、デザインの力で国境を越える体験ができる。2007年からスタートし、現在も毎年開催が続いている。

おすすめ or 行ってみたいコミュニティ
国内外のさまざま様々なcohousingの事例:
cohousingは北欧発祥のコミュニティを取り戻そうとする住まいの実践。どのように集まって住むか、どのような共同体にしていくか、小さな自治の取り組みがそれぞれのcohousingにて行われている。

聞き手:小原憲太郎が思ったこと

sample-photo 今回の対談は私自身本当に楽しく、そして勉強になりました。
「添え木はするけど盆栽はしない」。つまり、流れに合わせて「変化する
ことを前提としている」ということ。とてもいい言葉で、場づくりをする
人にとってはとても含蓄のある言葉だと思います。

コミュニティがしなやかな強さを持ち、長く育っていけるかどうかは、中心
にあるブレない軸、多様性を受け入れる懐の深さ、そして、程よい場の
マネージャの介入(今回でいう「添え木」)が必要だと考えてきました。
マネージャーは、なんでも受け入れる「ただのいい人」では務まりません。
それは、一歩間違えると悪い意味での「ゆるさ」につながったり、コミュ
ニティメンバーの当事者意識の欠如につながってしまうことも。また、
普通は好ましくない方向に変化してしまうのではないか?という怖さも
あるのだと思います。
それでも、メンバーのことを信頼して半分相手にあずける。そして、一緒に変化を愉しむことができる。そこに中村さんの場のマネージャとしての度量の大きさを感じました。

前編はこちら


この記事のポイント

許容力のある空間を作るときにユルさと同じくらい大切なのが、ブレない強さ

コミュニケーション創造のポイント1.参加者の断片を、シェアスペースに常に置いておく仕組みを作る

コミュニケーション創造のポイント2.「祭(=非日常)」を起こすこと

水谷 ともゑ

生き方ライター

「人」と「生き方」がテーマ。各界で突き抜けて生きる人へのインタビューを重ねる一方で、次世代の暮らしや社会のあり方を研究。シティリビング名古屋でコラム「愛の処方箋」連載中。 ブログ「30歳からのオンナの生き方道」http://ameblo.jp/tomoemizutani/

ブログ記事下ライン
コリッシュラボとは